製造DX、化学物質を扱う現場の"ヒヤリハット"情報をAIにて抽出

ヒヤリハット事例をイラスト付きで紹介している厚労省Webサイトに、タブが特設されている。化学物質を扱う、製造現場には過去の労災・ヒヤリハットなど、多くの有益な情報があるものの、ほとんどは紙ベースで管理・蓄積されている。

上記ヒヤリハット事例は様々な職場を対象としていて今年5月時点で全412件――。一方、化学物質を扱うその企業では、紙ベースの各種情報をデータベース化し、AIを活用して容易かつ的確に検索できるシステムが求められていたという。三井化学と、日本IBMは、安心安全な労働環境づくりを目標に、IBM Watsonを活用したSaaSシステム「労働災害危険源抽出AI」を今年4月より三井化学の大阪工場で稼働させている。

同システムは、大規模データを多角的に分析する「IBM Watson Explore」、IBM Cloudで稼働する検索効率化/テキストデータ分類が可能な「IBM Watson Natural Language Classifier」を搭載したもの。紙ベースで蓄積された過去の労働災害情報やヒヤリハット情報、トラブル報告書をデータベースに転換し、社員の安全活動レベルを向上させることを目指して、日本IBMのデータサイエンティストやコンサルタントにより構築された。

三井化学の社員は、工場内に設置されたパソコン端末に、これから行う「作業の場所」や「作業内容」、火傷や転倒といった「労働災害の種類」などのキーワードを入力することで、過去のデータベースからリスク相関性の高い事例の照会、類似事例を迅速に抽出できる。このシステムを利用することで、属人性の解消、スキルやノウハウの伝承、原因究明の早期化などが図れるという。

主要経営課題の1つに安全の確保を掲げている。三井化学はデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用しながら、さらなる社員の安全と企業価値の向上を実現していく構えだ。