VRで認知機能の低下したドライバーになってみる

国内の認知症患者数は2015年に500万人超と推定された。日本では今からおよそ10年前、65歳以上の高齢者の約7人に1人が認知症(有病率15.0%)であったが、2025年には5人に1人が認知症になるとの推計もある。

内閣府の平成29年版高齢社会白書(概要版)に上記数値が示されている。高齢化に伴う認知症患者の増加への取り組みが課題となっている。そのような中で高齢運転者に関しては、累次にわたる道路交通法改正のもと、加齢に伴う身体・認知機能の低下を踏まえた対策の充実・強化が進められている。わが国において、仮想現実(VR)技術を用いた認知症の疑似体験(本人体験編、業務応対編)を昨年5月から提供しているという。

凸版印刷は、「認知症体験VR」において、軽度認知障碍(解説:厚労省e-ヘルスネット)のドライバーによる交差点右折と車庫入れを体験する「運転編」を開発。これを6月14日より自動車関連業を軸にサービス提供している。認知機能低下について、本人ではなかなか気付きづらい危険な運転シーンをVRならではの没入感で体験し、改めて運転について考える機会の提供と正しい理解を通じて、安全で安心な社会の実現を支援する。

認知症ケアの研究と臨床経験の豊富な日本意思決定支援推進機構が新コンテンツを監修。高齢者運転に知見を有する高齢者安全運転支援研究会がシーンや撮影に対し企画協力。認知障碍のリアルな運転体験が得られるようになった。「運転編」では、認知機能に障碍が認められる人の当事者目線で、注意が必要とされる上記2シーンをVRで疑似体験できる。

運転時の認知機能障碍に対する正しい理解を促し、症状の共感を実現する。「認知症体験VR」は、スマホアプリからオリジナルの識別マーカーを読み込み、当該スマホを紙製組み立て式の「VRscope®」にセットして使用するもの。リモート研修・イベントでも手軽に各人視聴が可能とのことだ。