新たなシングルフレームCDIを実証、動的試料のイメージングへ

レンズの開口数(集光範囲、分解能に影響)や作製精度に制限されずに観察対象のナノ構造を可視化できる。有力な顕微法の一つ、CDI(コヒーレント回折イメージング法)は、平面波照明CDIと走査型CDI(タイコグラフィ)に分類される。

平面波照明CDIは照明領域より小さな孤立物体だけを観察できる。一方、走査型CDIは、照明領域よりも広がった物体を観察できるが、試料を走査しながら複数回ごとの回折強度パターンを収集する必要があるため、時間分解能が低い――ゆえに、広がった物体の再構成像を1枚の回折強度パターンから取得できる「シングルフレームCDI」の開発が求められていたという。

理化学研究所東北大学は12日、理研RSC-リガク連携センターイメージングシステム開発チーム、東北大国際放射光イノベーション・スマート研究センターの共同研究チームが、1枚の回折強度パターンから広がった試料の実空間像を再構成できるシングルフレームCDIを提案・実証したことを発表。この手法の像再構成計算は、「実空間拘束」が不要になることも重要な特長だという。

同チームは、三角形など非点対称でエッジが鋭い開口を用いることで、シングルフレームCDIの像質が向上することを発見。大型放射光施設「SPring-8」における実証実験で、1枚の回折強度パターンから空間分解能17nm(ナノメートル、10億分の1メートル)で試料像の再構成に成功した。この空間分解能がFZPのレンズとしての空間分解能(50nm)によって制限されないことを確認した。

動的試料のイメージングへの展開が期待される。今後、次世代放射光施設の登場や次世代の画像検出器の開発により、時空間分解能がさらに向上すると考えられるという。共同研究チームが提案したシングルフレームCDIは、オンライン科学雑誌『Optics Express』に、そしてその実験結果も同誌電子版に掲載された。