医師主導、簡単構築AIモデルで男性不妊症の病理を自動診断

不妊症の原因の約半数は男性側にある。なかでも最も重篤な病態すなわち無精子症には、閉塞性と非閉塞性の2種類があり、どちらも精子を採取する手段として精巣内精子採取術(TESE)が必要となる。その際、精巣内の状態を把握するために一部の精巣組織を病理検体として提出――

病理専門医がJohnsen's score count方法を用いて精巣内における精子への分化状態を数値化している。閉塞性無精子症の場合、精子が回収される割合は高く、同scoreは8点以上の結果であることが多い。非閉塞性無精子症では精子回収の割合は低く、1~3点を示すことが多い傾向にあるという。東邦大学医学部泌尿器科学講座の研究グループは、精巣内の状態をAIで判断するモデルを作成した。

今回、Google Cloud™の視覚認識に特化したカスタム機械学習モデルのトレーニングと開発が可能なAutoML Visionを利用し、AIに関する専門知識を持っていない医師主導で画像認識AIモデルを構築することができたという。

東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターを受診した患者で、閉塞性無精子症または非閉塞性無精子症でTESEを施行した275例(2病理標本264例)を対象に、Johnsen scoreによりラベリングし、計7115枚の病理写真を撮影した。撮像を教師データとしてAutoML Visionへアップロードし、"クリック"のみで平均適合率(AUC)0.826の精巣病理AIモデルを構築した。

さらに、各画像の同score判断部位を切り抜いて合計9882枚の病理写真を学習させたAIモデルを構築し、正診率を99.5%とした。今後AIの仕組みの基本さえ理解していれば、簡単にAIモデルを作れる時代に突入することが期待されるという。研究グループの成果は今月10日、英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。