昨年のグローバル調査では、プロセス産業に属する回答者の64%が2030年までにプラントの完全な自律操業を見込んでいることが明らかとなった(YOKOGAWAプレスリリース)。AIなどの技術を活用し、人を介さない自律制御の仕組みが普及すると予想されている――が、従来の無線通信では遠隔データ伝送の際に遅延が発生――プラントシステムの自律制御においては、この通信遅延が大きな課題になっていたという。
横河電機とNTTドコモは、5Gシステムとクラウド、AIなどを活用し、プラントのシステムをリモート制御する共同実証実験を実施する。今回、低遅延などMEC(多重アクセスエッジコンピューティング)の特長を持つドコモオープンイノベーションクラウド®上に横河電機が開発した制御AIを設置し、プロセス装置の1つ「三段水槽」の制御装置に5G通信モジュールを備えることで、水位のリモート制御を行う。
これは、化学薬品や石油など流体を扱うプロセス産業の顧客が持つ既存システムを変えることなく、容易に、最新AIを備えた5G対応の自律制御装置を利用してもらうことにつながるものだという。横河電機は、自律制御が非常に困難とされている「三段水槽」において、同社製AIを用いて水槽の水位を自律制御する実験に成功していて、その技術は業界最高水準とされているとのこと(参考映像)。
今年度内にクラウド上から上記強化学習AIを用いて「三段水槽」の水位を遠隔制御するデモ環境を構築し、LTEと5Gで通信性能の比較・評価などを行う予定だという。両社は、将来的なプラントの自律制御の実現を視野に、技術面の検証・最適化に向けて、協力していく。