量子コンピュータでも破れない暗号をICカードに実装する

産業および医療・ヘルスケア、社会インフラ分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速している。世界中で個人認証用ICカードの重要性が増している現在、各種認証のしくみには、スーパーコンピュータでも解読困難なRSAなどの暗号アルゴリズム、公開鍵暗号方式が用いられている。

既存方式では、2030年にも実用化されるだろう量子コンピューティングにより、公開鍵暗号が破られかねない。今後ますます拡大するデジタル社会では、より一層強固な公開鍵暗号が求められるという。凸版印刷とカナダISARA社は、ICカードへの耐量子-公開鍵暗号の実装に向けて連携する。

両社はこれまで培ってきたICカードのセキュリティ技術や認証技術を用いて、耐量子-公開鍵暗号を実装したICカードの開発を進めていく。耐量子-公開鍵暗号のICカード実装と運用は世界でも先進的な試みであり、ICカードを利用するあらゆる環境に大きな影響を与える。「耐量子-公開鍵暗号のプログラムの開発」とその機能検証、および「耐量子-公開鍵暗号を実装したICカードを介したアクセス認証・管理の技術検証」を行う。

耐量子-公開鍵暗号における電子署名の生成と認証のアルゴリズムを実現するICカード用プログラムを開発し、上記技術検証では、量子セキュアクラウド技術への適応性も実証――NICTとも連携し、テストベッドH-LINCOS等で検証を行う予定である。これらを通じて、量子セキュアクラウド技術の利用推進に向けた導入支援、秘匿性の高い電子情報の安全なバックアップやデータ流通のサービス、ソリューションの提供を目指す。

耐量子-公開鍵暗号を実装したICカードによるアクセス認証・管理は、世界各国において将来の経済・社会に大きな変革をもたらす革新技術であり、これを早期に実現し普及させることで、両社は、世界の安全・安心な情報流通基盤の構築および維持に貢献していくという。