医療分野DX、看護記録の負担を音声認識AIにて軽減

長時間労働や人手不足が深刻化している。医療従事者の働き方改革が喫緊の課題となっている昨今、さらにCOVID-19の影響が続く中、感染症拡大を防止するため、人と人、人と医療機器の接触機会を減らし、密集・密接を避けながら医療提供体制を維持する仕組みが求められているという。

地域の中核病院である済生会宇都宮病院は、地域医療に貢献するための安全な診療を目指し、栃木県の救命救急センターを受託運営し、高度急性期医療を提供してきた。感染防止への配慮と医療従事者の業務効率化を両立する環境整備に向けた検討も進めてきた。今年2月、NECとともに、人工知能(AI)の活用により看護師の発話内容を分析・テキスト化して業務を支援する「看護記録支援システム」の実証を行った。

病棟看護師及び専門・認定看護師32名を対象に、声(情報)漏れと患者プライバシーに配慮しつつ、場所を選ばず効率的に記録を残せる同システムを利用し、AI搭載スマホを用いて発話内容をテキスト化。その利便性や安全性などの評価・検証を行った。結果、記録業務を軽減して患者に対するより質の高い看護に注力することができ、入力デバイスへの接触機会を減らすことにより、感染症リスクの軽減も実現できる――

すべて手入力していた従来との比較で、入力時間を約50%削減できることを確認したという。医療系の専門用語に対応した音声認識エンジンを搭載した同システムでは、看護師の発話内容を高精度でテキストに変換。テキスト化したデータを看護記録の形式に合わせて抽出可能なため、看護師は抜き出された情報に基づきナースステーションで簡単に看護記録を確認・整理できる。

上記成果を踏まえ、同病院では今後、発話内容を一層クリアに伝達できるヒアラブルデバイスの導入も検討しつつ、入院・外来患者に接する医療従事者の業務効率化と感染症対策の実現に向けて、同システムの本格活用に取り組んでいく考えだ。