ものづくりDX、製品の外観異常をAIにて高精度検出

顧客ニーズの多様化に伴い、多品種少量生産や製品の高機能化が進む。近ごろ製造業では、さらなる作業効率の向上と高度な品質管理のためのデジタル技術活用が検討され、人手によってキズや加工ミスを検出していた工程においては特に、AIの導入が加速している。

現場で発生する異常はしかし、多種多様で頻度も稀である。ゆえに高精度かつ効率的に異常検出できるAIの開発が求められているという。富士通研究所は、製造ラインの検査工程向けに、人工的に異常を付加した製品の画像を生成しながらAIモデルを学習させることにより、キズや加工ミスといった外観の多種多様な異常を高精度に検出する画像検査AI技術を開発した。

同技術は、カーペットやプリント基板のように個体ごとに様々なバリエーションがある製品において、不良品の教師データを準備しなくても、糸のほつれや配線パターンの不良といった異常箇所を正しく検出する。様々な工業製品の外観画像を集めた公開データ(MVTec社提供)を使ったベンチマークで、異常を検出するAIモデルの性能を測定する指標AUROCにおいて世界最高レベル(同社調べ)の98%を達成した。

AIの弱みを補強。5000種類超の人工物画像から形・大きさ・色が様々な素材を生成し、異常の個数や付加する位置を確率的に変えて異常を付加する技術も新開発し、製造現場で発生する多種多様な異常箇所の検出を可能にした。富士通インターコネクトテクノロジーズ長野工場の検査工程にて、プリント基板の検査工数を25%削減できることを確認した。

これにより検査員の負荷軽減や生産性の向上を実現し、現場の働き方改革を支援するという。同社は今回の技術について、「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を支える技術としてさらに開発をすすめ、製造業のDXを支援するものづくり事業ブランド「COLMINA」への適用をめざしていく考えだ。