山岳トンネル内を覆うコンクリートの品質、AIにて自動評価

山岳トンネル覆工コンクリートの品質・耐久性を確保するためには、その表層品質を評価し、出来形を確認しながら適切な施工方法を検討することが重要である。そこで「表層目視評価」という定量化手法の展開が全国的に進んでいる。

国交省東北地方整備局のPDF資料にある上記手法は、コンクリート構造物全体を目視確認したうえで、総合的に全体を評価するものであり、特殊技能不要で、担当者の熟練度に関わらず実施できる――が、評価担当者の個人差やPDCAサイクルに有効活用するために必要な評価結果のとりまとめ作業に時間を要するという。

西松建設は、sMedioと共同で、山岳トンネル覆工コンクリートの表層品質評価を行うためのAI活用技術「A.E.s.SLiC(イースリック)」を開発した。これは、覆工コンクリート写真を用いて、「表層目視評価シート」に則った①はく離②気泡③水はしり・砂すじ④色むら・打重ね線⑤施工目地不良⑥検査窓枠段差の6項目をAIが自動評価するシステムであり、タブレット、クラウトサーバー、PCにより構成されている。

覆工コンクリート面のデジタル画像を入力すると、上記評価シートの各項目についてAIが評価し、その結果が出力される。「VIS」と呼ばれる画像処理法(参考PDF資料)を写真に適用して覆工コンクリート面の凹凸やエッジ、キメ、粗さ等の視認性を上げる機能もある。VISにより鮮明化処理された画像は、AIの教師データの補強、現場の状況により不鮮明な画像しか取得できない場合の評価精度の維持・改善を目的としている。

同システムによって、評価および評価結果とりまとめ作業の迅速化と、不具合発生時の改善対策の早期実施が期待されるという。同社は、山岳トンネルの省人化・無人化施工を目指した「山岳トンネルAIソリューション」の構築を引き続き推進し、山岳トンネル工事の自動化、生産性向上、労働災害の低減等を進めていく構えだ。