世界標準であるACMGガイドラインの"カイゼン"を達成!

タンパク質やDNA等の分子を調べて疾患を特定するには、遺伝子変異の病原性、変異の遺伝形式、臨床症状など各種情報の統合を要する。そこで2015年、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)と分子病理学会(AMP)は、ヒト遺伝性疾患の分子診断におけるガイドラインを作成した。

現在世界標準として幅広く利用(Google Scholarでの引用はこれまでに9万7千回超)されている。ACMGガイドラインでは、エビデンスの性質を示すPVS(超強力)、PS(強力)、PM(中等度)、PP(支持的)といった基準の組み合わせから、変異の病原性を判定する。例えば、PVS1つ&PM≧2を満たす場合や、PS1つ&PM≧3を満たす場合、その遺伝子変異は「病原性あり」と判断される。

変異の機能的タイプに基づくものがいくつかあり、タンパク質の翻訳開始位置が変わるか無くなってしまうことによる誤分類や、通常よりも長い異常なタンパク質が翻訳されることによる判断の過誤が起こりえる。コドン(mRNA上の暗号単位)の影響や、アミノ酸の個数にまつわる評定上の課題を抱えている。それはエキスパートの知識・意見にのみ依拠していて、客観的データに基づいて吟味されたものではないという。

YCU大学院医学研究科 遺伝学の研究グループは、遺伝統計学的解析とAI(機械学習)を用いたデータ駆動型アプローチで、ACMGガイドラインを洗練させるための手法を開発し、世界標準指針の「カイゼン」を達成した。これにより、既存のガイドラインに従った判定では見逃されていた遺伝性疾患の原因遺伝子変異を発見したり、誤診を回避したりすることが可能になるだろうという。

AMEDゲノム医療実現推進プラットフォーム事業・難治性疾患実用化研究事業・脳科学研究戦略推進プログラム、日本学術振興会などによる支援を受けて行われた。研究の成果は、オンライン医学雑誌「Med」に掲載された。