根拠を示せるAIにて遺伝子変異の病原性を推定し、検証する

ゲノム医療では、遺伝子の多様性(患者の個々の遺伝子変異)に対して、病原性の有無を知ることが重要である。患者の遺伝子に病原性のある変異を見つられれば、その変異に対して治療法を検討することができる。

しかし現在、膨大な遺伝子変異のうち疾患への関連性が明らかになっている変異はごく一部にすぎない。病原性の有無が未知の遺伝子変異からは、疾患の治療に役立つ情報を得られていないといった課題がある。そこで、このシステムの利用が進めば、がんをはじめとしたゲノム医療での治療方針検討など、診療支援につながるとともに、患者にとって最適な医療提供が加速されることが期待できるという。

富士通京都大学大学院医学研究科の研究グループは、AMEDの「臨床ゲノム情報統合データベース整備事業」において、特定の遺伝子変異が何らかの疾患の原因になる可能性(病原性)の有無を推定し、その推定根拠を添えて、治療方針を検討する医師やゲノム医療の研究者に示すことができる――AIを活用した検証システム「MGeND Intelligence」を開発した。

同システムは、遺伝子変異の病原性の有無を高精度に推定できる病原性推定AIと、推定の根拠を示す説明可能AIと、関連する論文記載の検索を支援する文献探索支援AIとで構成される。京都大学が2018年に公開した臨床ゲノム情報統合データベース「MGeND」と連携し、病原性の有無が未知の変異も含めて医療従事者や研究者による遺伝子変異の調査・臨床的解釈の作業を支援する。

「MGeND Intelligence」について、京都大学は4月から共同研究者や協力機関などへの利用提供を予定している。一方、富士通は、今回の成果をもとに説明機能のさらなる充実を図り、電子カルテを主とした病院情報システムにおけるゲノム医療を支援する機能を新規開発し、全国の中核拠点および拠点病院、連携病院へ導入していく考えだ。