国内製薬7社とデータ・予測モデルを共有、産学で創薬を加速する

米国では上市された医薬品のおよそ2/3がアカデミアシーズから創出されたものだ。一方、高い基礎研究力を有している日本において、アカデミア創薬の医薬品は限られている。アカデミアシーズを臨床へ繋ぐためには、基礎研究者がアクセス可能な薬物動態・安全性評価の創薬研究基盤を要す――

そこで、AMEDが推進する「創薬支援インフォマティクスシステム構築」(iD3-INST)事業にて、Webで公開されている薬物動態・心毒性・肝毒性のデータを選別・編集した基本版データベース(DB)、および薬物動態・安全性AI予測モデル(基本版予測モデル)を2015年から構築していた。

医薬健栄研AI健康・医薬研究センター、理研 生命機能科学研究センター、大阪市立大学URAセンターのグループは、iD3-INSTにおいて、国内製薬企業7社(アステラス製薬大塚製薬小野薬品工業第一三共武田薬品工業田辺三菱製薬日本たばこ産業)と社内データ――重要な知的財産である化合物情報・スクリーニングデータ――及び予測モデルを共有する、新しい産学連携の枠組みを構築したことを今月8日に公表した。

製薬企業が持つ質の高い薬物動態と毒性のスクリーニングデータからなるDB(連携版DB)とそれに基づく予測モデルを創出することに成功。さらに、その予測モデルを富士通にライセンスし、iD3-INSTで創出した「基本版」創薬支援プラットフォームを長期的に維持するためのエコシステムも築いたという。

世界的にも先進的な成功事例であり、国内での医薬品創出のためのオープンイノベーションを加速させるものと考えられる。創薬支援ネットワークによるアカデミア発創薬への支援機能を増強するとともに、国内製薬企業の創薬プラットフォームの強化に繋がることも期待される。このたびの産学連携の取り組みは、電子版科学誌「Drug Discovery Today」に掲載された。