多彩な用途でゴムの配合物性値をAIにて予測する

われわれの身のまわりや職場、車両、建物、医療・産業現場等で使われている日本語の「ゴム」は3種類ある。ここで話題にしたいのは英語で言う"rubber"(弾性ゴム)であり、それが本邦初輸入されたのは1845年、将軍への献上品としての電線被覆材だったとの説がある。

日本ゴム協会Web豆知識③にそのような話がある(BP-A編集者注:黒船来航は1853年なので同コラムの"ペリーが献上"あるいは"西暦年"が誤謬?)。今月15日、横浜ゴムは、AIを活用したゴムの配合物性値予測システムを独自開発し、昨年12月よりタイヤ用ゴムの配合設計において実用していることを発表した。今後はタイヤのみならず、ホースやコンベヤベルトなど多岐にわたるゴム商品開発での利用を開始するという。

同社はマテリアルズ・インフォマティクスによるゴム材料開発技術、インフォマティクス技術を活用したタイヤ設計技術を発表するなど材料およびタイヤの設計開発プロセスでAIを活用した技術開発を進めてきた。20年10月には人とAIがデジタル革新でコラボする「HAICoLab」構想を策定。この構想の下で現在、プロセスに加え製品やサービスなどの革新を目指しAI利活用を推進している。

今回発表したシステムでは、人がゴムの配合設計パラメーターを入力するとAIが予測される配合物性値を出力する。さらに人が予測された結果を判断しやすくするために予測値の確からしさを表示する機能や、目標とする配合物性値に近しい配合を探索する機能を付加。人とAIが協奏しながら新たな知見が得られるしくみを設計した。

同システムにより、膨大な仮想実験が可能となるため、開発のスピードアップやコスト削減、高性能な商品の開発に加え、経験の浅い技術者による配合設計が容易になることが期待できるという。同社は、ユーザーエクスペリエンスの向上と、Society5.0の実現に貢献していく構えだ。