現在全国13ヶ所の臨床研究中核病院は、各地域や日本の医療発展へ貢献する役割を担う。そこで用いる臨床研究データは、機密性の高い診療情報を含み、収集・保管・分析等に高水準のセキュリティ実装が必要となる。
臨床研究中核病院としても、特定機能病院(高度医療の提供、高度医療技術の開発および高度医療に関する研修を実施する能力等を備えた医療機関)としても承認・指定されている。千葉大学病院では、デジタル社会の進展とともに多様化し深刻化するセキュリティリスクに対応しながら、複数施設との臨床研究を実施するなど、より安全かつ柔軟にデータの利活用ができる、新手法の実現が求められてきたという。
同病院と、NTT Comは、「秘密計算システム、秘密計算ディープラーニングに関する共同研究協定書」を締結。臨床研究データを複数施設から安心安全に収集し、保管・分析するための高度情報セキュリティ環境の構築をめざす。秘密計算ディープラーニングは秘匿化した情報をそのままAIに学習させ、結果のみを出力して診療補助等を行うことを可能とする、標準的な深層学習に世界で初めて秘密計算を適用した技術だ(19年NTT発表)。
希少疾患の「多施設共同研究」のしくみ確立に取り組んでいる。千葉大学病院は今回、「秘密計算システム」を利用し、複数の施設から収集した臨床研究データが、相互に秘匿された状態で分析可能か検証する。これにより、同病院の各診療科では、複数施設の臨床研究データを用いて、臨床研究に必要な横断研究や、縦断研究を実施する可能性が広がる――。
「秘密計算ディープラーニング」の利用では、複数施設からの臨床研究データを秘匿した状態のままでAIモデルとすることで、疾患の診断時間短縮の実現をめざす。さらに処方する薬剤の選定を補助するAIモデルを作成して、患者の状態に応じた最適な薬剤を処方することにより、病状の進行を抑える研究につなげるという。