国内臨床医療現場における全自動培養装置の実用化に向けて

2014年9月、世界で初めてiPS細胞を用いた移植手術が行われた。着実に成果を上げている、再生医療は、有効な治療法のなかった疾患に適用できるなどとして夢も膨らんでいるが、安全性を確保しつつ迅速に提供される必要がある。

そのため、同年11月に再生医療等安全性確保法医薬品医療機器等法が施行され、再生医療等の安全性の確保に関する手続きや細胞培養加工の外部委託のルール等が定められた(参照:厚生労働省「再生医療について」)。それまで医師法の下、自由診療で、院内製剤に依拠していた細胞治療は、安全で安心できる治療として届けられる医療となった。

細胞治療である再生医療は1~3種に分類され、各基準のもと、許可を得た医療機関で治療や研究が行われている。再生医療分野では、幹細胞など細胞のみにフォーカスしがちだが、近ごろ細胞の分泌する成分も注目されている。液体培地の中で細胞を培養した後の、細胞を取り除いた液体は培養上清液と呼ばれ、その中には様々な成分が含まれていて、有効性に期待が寄せられている。

さらに先の再生医療としては、細胞治療から発展し、培養細胞から移植用の組織・臓器を作り出すことを目的として、まさに世界が切磋琢磨して研究を進めているところであり、今後は日本でも市場の急拡大(シードプランニング社17年調べ)が見込まれているという。RMDC富山大学イメージワンは三者共同研究契約を締結し、昨年11月より、細胞組織培養技術および全自動細胞培養装置の開発を行っている。

セキュリティ、通信、制御、AI、培養技術など、工学的技術と生物学的技術の融合を要する同装置の実用化に向けて、初年度には「細胞培養用試薬の研究開発」「培養上清の高品質化の研究」「細胞活動を増大させる培養条件の開発」を主軸とし、移植用組織・臓器の培養につながる、細胞培養条件を改善するための要件の洗い出しと、技術的課題の解決に取り組んでいる。