肌の質感を可視化、印象をAIにて客観的に評価する

人は、肌の色・質感などのわずかな違いを瞬時に読み取り、顔や肌の印象を感じ取る。そこで、肌を美しく魅せる化粧品を提供するため、見た目の肌印象を評価するさまざまな手法を開発し、化粧品開発に応用してきたが――

多様で繊細な肌印象の違いを人の目と同じレベルで評価することは難しく、従来手法では特殊な装置を要するため測定が容易でないなど、課題があったという。花王メイクアップ研究所は、人工知能技術のひとつ深層学習(ディープラーニング)を用いて、肌の見た目の印象を客観的・定量的に評価し、画像化する「肌評価AI」を開発した。これにより、化粧感、化粧くずれの程度、年齢印象などを客観的に評価することが可能になるという。

一般的なAIの欠点である"判断のブラックボックス化"を避けるため、画像認識用ディープラーニングモデルとして高評価を得ているVGG16(オックスフォード大学VGGが開発した16層画像認識モデル) を、素肌と化粧肌を判別する目的に合わせて再学習させ、「化粧感評価AI」を構築した。学習に用いた512名中269名の顔画像について、AIと熟練判定者5名との評定を比較した結果、高い精度で相関を確認できた(R=0.72)。

今回構築した手法は、肌パッチデータセットや学習方法を調整することで、化粧感評価以外にもさまざまな応用が可能だという。花王では、肌年齢の推定、化粧くずれの程度などの評価をするAIモデルにこれを応用。たとえば、「化粧くずれ度評価AI」では、化粧くずれが鼻、頬、額など皮脂が出やすい部位から進行すること、化粧持ち効果を狙って設計した化粧下地は明らかに皮脂による化粧くずれを低減させていることなどを容易に画像化できる。

キメ、毛穴、シワ、化粧料の分布など肌評価における重要な要素を見極める。ディープラーニングの特長が最大限発揮される手法の研究成果は、日本視覚学会2021年冬季大会にて発表された。