オフィス内の温度ムラをなくしてエネルギー消費を半減させるAI空調

個別空調を採用しているオフィスビルでは、ゾーンごとに空調機が設置されている。各空調機はそこで働く人によって、好みの温度に設定できるけれども、近ごろ在宅勤務やテレワークの進展、フリーアドレスの導入など、オフィスワーカーの働き方の多様性が広がっているため――

ゾーンごとの滞在人数やパソコン等の稼働熱量などが日々異なる。そのため、個人による空調温度設定では、日々刻々と変化する多様なオフィスワーカーのニーズに即時に合わせることが難しくなっている。隣接する空調機がそれぞれ異なる設定温度を維持しようとして干渉すると、不要な負荷が発生し、空調費用の増加などを招く。スマート化せず大量のセンサーデータで多数の空調機を制御しようとすれば、そのロジックが過剰に複雑化するという。

東京建物TOKAIコミュニケーションズ内田洋行は、上記課題の解決に向けて、東京建物八重洲ビル7階の東京建物ビル事業本部のオフィスフロアにて、AI(人工知能)による空調制御の実証実験を実施。昨年7月27日~11月27日の実験期間中に、同フロアにおける温度ムラの解消と約5割の消費エネルギーの削減を達成した。

同フロアに65個の無線センサーを設置し、それらのデータを基にAIが同フロアの39台の空調機制御を行なった結果、夏期(7月27日~8月31日)と秋期(10月5日~11月27日)には温度ムラがなくなり、秋期には消費エネルギーが半減した。今後は四季を通してAIによる空調制御を実現させるため、冬期から春期に実証実験を行い、オフィスの人口密度などの要素が変わった場合でも同様の効果が得られるか検証する。

東京建物八重洲ビル内で、実証実験対象フロアの拡大も予定しているという。3社は、これらの検証結果を踏まえ、AIによる空調制御に用いるパラメータの調整を行い、さらなる快適なオフィス空間の提供および省エネルギーの達成を実現していく考えだ。