タイ北東部では、老朽化などを理由に一部の火力発電所が2025年以降停止される。隣国からの電力購入や、水力・太陽光発電所などの新設が検討されている。これら複数手段による電力供給を実現するためには、送電可能容量を増やす設備の増強が必要となる。未来計画は多額の投資を要するために進んでいない。そのうえ複数系統を併用する際の課題を抱えている。
現状の系統運用では多様な電源接続時の電圧最適化ができず、送電ロスの抑制と安定的な電力供給の両立が難しいという。NEDOはタイ王国エネルギー省(MOEN)と電力系統運用の低炭素化・高度化を目的とした実証事業を行う協力合意書(LOI)を取り交わし、委託先の日立製作所はタイ発電公社(EGAT)と電圧・無効電力オンライン最適制御システム(OPENVQ)の実証事業を12月に開始した。
EGATの北東地域制御所管轄範囲で行う。同事業では送電系統にOPENVQを導入し、これと給電指令所のSCADA(電力系統監視・制御システム)を連携させ、送電系統の計測データ、高精度需要予測技術、高信頼の最適潮流計算を用いて送電系統の電圧・無効電力を最適化し、送電ロスを抑制する。抑制分に相当する火力発電所の燃料調達費および系統運用に関わるCO2排出量の削減に貢献する。
送電系統の電圧の最適化により送電可能容量が増える。送電設備の増強に多額投資せずとも、再エネから供給される電力の安定送電を実現できる。温室効果ガス排出量の削減をめざす同国内での再エネ導入拡大への貢献も期待できるという。今回、二国間クレジット制度(JCM)活用によるCO2削減効果の定量化も図られる。