車載カメラ映像をAI学習、送信データ量を大幅削減して遠隔見守りに

つながるクルマや先進運転支援システムの実用化が加速し、高水準な自動運転車の商用化を目前に控えている。モビリティ市場では今、より一層安全安心な移動の実現が求められている。

特に車両の走行環境や乗員・乗客の状況把握において、複数カメラによる高画質な撮像を管制センターへ低遅延かつ安定伝送することが重要――だが、データ量が大きい映像の伝送は広帯域を要する。従来、無線通信帯域が低下する走行中には、映像の乱れや通信遅延が生じ、高画質映像のリアルタイム伝送が難しかったという。

NECは、人工知能(AI)を活用し信号機等の注目領域に絞って画質を高くし、送信データ量を削減する「学習型メディア送信制御技術」を開発した。危険予兆検知に必要な物体検出、距離推定、レーン検出などの精度を維持しつつ無線通信帯域を最大10分の1に削減できる、同技術により、車など移動体において、危険な状況のリアルタイム検知をサポートするなど、遠隔見守りの高度化に貢献するという。

自動運転バスの遠隔監視センターにて運行状況を把握する「車外・車室内状況見守りソリューション」に同技術を採用。これを21年度中に商用化する予定だという。このしくみでは、伝送された映像データから交通参加者の位置・距離と道路の形状を推定して交通シーンを鳥瞰できる「シーン認識技術」による車外の危険状況の検知や、人物の姿勢を抽出する「姿勢推定技術」による車室内の乗員・乗客の異常な状態の検知を実現する。

AIをカメラ映像の送信器に組み込み、センター側の物体検出や距離推定等の映像認識に必要な注目領域と最適画質を学習し、映像の送信制御をすることで、伝送データ量の大幅削減を実現する。今回の技術は総務省のローカル5G開発実証事業のうち群馬県前橋市と静岡県沼津市における自動運転バスの公道実証にて活用され、上記ソリューションは「第13回オートモーティブワールド」で披露される。