グリーンかつ持続可能な新工場でパワーデバイスを量産する

様々なモノの電動化が進む今日、デジタル化という言葉に踊る世間はアナログ回路の重要性を見落しがちだ。アナログな電気エネルギーを制御・供給する電力用半導体素子(パワーデバイス)は、デジタル社会に不可欠であり、その材料として近ごろSiC(シリコンカーバイト)が注目されている。

シリコンと炭素の化合物であるSiCは、絶縁破壊電界強度がSiの10倍、バンドギャップがSiの3倍。デバイス作製に必要なp型、n型の制御が広い範囲で可能であることなどから、Siの限界を超えるパワーデバイス用材料として期待されているという。ロームは、SiCパワーデバイスの生産能力強化のために一昨年2月よりローム・アポロの筑後工場に建設していた、新棟が昨年末に竣工したことを発表した。

新棟は、排熱を有効活用した高効率の空調設備や純水製造設備、LED照明の導入などで省エネルギー化に努めていて、従来設備と比較してCO2排出量を20%(約7,000t分)低減している。さらに付帯エリアも含めた免震構造の採用による地震対策のほか、浸水対策、ガス消火設備、非常用発電機などを導入していて、各種災害に備えた工場になっているという。

ロームは2010年にSiCパワーデバイス(SiC SBD、SiC MOSFET)の量産を始めて以来、世界で初めてフルSiCパワーモジュールやトレンチ構造を採用したSiC MOSFETの量産を開始するなど、業界をリードする技術開発を進めている。一方で、製造面においてもロームグループが誇る一貫生産体制を構築し、ウエハの大口径化や最新設備による生産効率向上に取り組むとともに、モノづくりにおける環境負荷軽減に取り組んできた。

ドイツでSiCウエハを製造するグループ会社SiCrystalの工場も、次年度より再生可能エネルギー使用率100%での稼働を予定。同工場での購入電力由来のCO2排出量はゼロになるという。