スタッフの暗黙知×AI画像診断、ゴム農園で罹病木を高精度判定

その樹液が天然ゴムの原料となる。東南アジアの広大な農園で栽培されている「パラゴムノキ」は、糸状菌"ネッタイスルメタケ"が原因の根白腐病(ねしろぐされびょう)にかかると、根元に症状が現れるため早期発見が難しく、見つけられずにいると、その木はやがて枯れ死んでしまう。

深刻な病害だが抜本的な対策がない。現状、人は農園を巡りつつ異変の発見に努め、同菌に感染した木を見つけた際に、罹病部位の切除や薬剤処理を施している。葉のつき方や色味などから農園スタッフが総合的に判断し、罹病木と判定されたものを掘り起こして対処している。診断精度は、スタッフ個人の知見やスキルに依存し、バラつきがあったという。

ISIDイノラボは、ブリヂストンとともにパラゴムノキ根白腐病を診断する技術を開発し、罹病木を高い精度で見分けることに成功した。ISIDが持つAI画像診断技術と、ブリヂストンのインドネシア農園スタッフが持つ病害判定(罹病木判定)に関する「暗黙知」を融合させた仕組みを試験運用し、罹病有無の判定について、品種や樹齢に関係なく約90%の精度で実施可能であることを確認した。

今回、広域農園で罹病木を特定するために、自動操縦によるドローンの空撮データを活用した。一般的に上空からの画像はサイズが小さく、葉単体の罹病の特徴を捉え難い。そこで、"葉の垂れぐあい"や"葉の色ムラぐあい"など葉群を全体的に捉えて、それをAIの教師データとした。ディープラーニングによる物体検出によって、罹病葉群を高精度に特定――品種や樹齢、季節など多彩な条件で精度検証を繰り返し、上記の仕組みを構築した。

罹病木の検出結果をタブレットに転送し、罹病木探索アプリ地図上に表示する。同アプリを使い、罹病木の処置も行える。現地で実証された仕組みおよび高精度病害診断技術は、根白腐病の早期発見・治療を可能とし、ゴム農園の生産性向上に貢献するという。