磁気ヘッドの挙動を高精度画像解析、HDDのさらなる大容量化へ

米調査会社IDCによると2018~25年のわずか7年間で世の中のデータ量が5倍以上になる。「データ爆発の時代」を迎えている。世界では、今年のハードディスクドライブ(HDD)年間総出荷容量が1ゼタ(ギガの1兆倍)バイトに達し、その売上は200億米ドルにのぼると見込まれている。

HDD容量のさらなる増加とデータ転送速度アップを実現するためには、書き込みヘッドの動作を正確に把握して合理的な設計にする必要がある。が、100n(ナノ:10億分の1)メートル以下の微細構造をもち、1n秒以内に磁化反転が行われる同ヘッドの観察は困難であり、これまでは磁化挙動シミュレーションによる解析や、磁気記録媒体に書き込みを行った際の特性を用いた間接的な解析によって動作を推測するしかなった。

ゆえに新しい手法の開発が望まれていたという。東芝JASRI東北大学は共同で、SPring-8の放射光を用い、書き込みヘッドの磁化の挙動を100億分の1秒の精度で画像化することに世界で初めて成功した。ビームラインBL25SUに設置された走査型X線磁気円二色性顕微鏡装置を用いたHDD書き込みヘッドの新規解析技術を開発した。

同技術では、SPring-8の蓄積リングから周期的に生成されるX線パルスに同期させて、その10分の1の周期で書き込みヘッドの磁化を反転させるタイミング制御を行い、時間分解測定を実現。書き込みヘッドの反転時の磁化変化の解析を行い、主磁極部分の磁化反転が1ns以内に完了する様子をとらえた。主磁極部分の磁化反転に伴ってシールド部分に生じる磁化の空間的パターンの観察にも成功した。

これにより、次世代磁気ヘッドの開発が加速し、HDDのさらなる大容量化が期待できるという。米国学術誌「Journal of Applied Physics」に掲載された今回の研究成果は、第44回日本磁気学会学術講演会でも発表される。