上述のような従来手法は、個別の顧客ニーズに合う商品を効率的に生産するマスカスタマイゼーションによる多品種混流生産ラインにおいて、生産ラインが複雑化し、パラメーターのパターンが膨大となり、評価時間の増大やシミュレーション精度に課題があったという。NECと産総研は、AIシミュレーション融合技術を用いて、生産ラインの事前評価と運用の効率化を行う実証実験を、日産自動車と共同で実施した。
共同検証において、生産ライン構築・計画変更を10倍以上高速、かつ予測誤差1/6以下の高精度化を実証した。AIシミュレーション融合技術は、NEC-産総研人工知能連携研究室が開発したものであり、精緻なシミュレーションを短時間で自動構築し、少ないデータから最適な意思決定を支援する。これを生産ラインへ適用すれば、様々な物事の効率化や判断に効果を発揮するだろうという。
今回の実験では、日産の"実"生産ラインで使っているシミュレーターを活用し、精度の高い結果を得られるパラメーターを推定――。新規生産ラインの早期構築や既存生産ラインでの迅速な計画変更により機会損失の削減・在庫削減が可能になることに加え、高精度予測による原価見積もりの精緻化・追加投資の削減が可能になることが確認できた。この技術を自動車メーカーに適用した場合、数百億円規模の効果が見込めるという。
AIシミュレーション融合技術は、顧客の応用研究・開発を支援する新事業会社BIRD INITIATIVE経由で、コンサルティングサービスとソフトウェアプロトタイプ開発サービスとして、今月から提供される。