史上最大スケールの気象シミュレーション、データ同化計算を富岳にて

気象情報は社会生活の礎である。集中豪雨や台風等による災害から私たちの命と財産を守る、気象予測は現在、世界中で行われている毎時の気象観測と、コンピュータによる数値シミュレーションと、観測データとシミュレーションを数学的な手法で繋ぎ合わせるデータ同化によって支えられている。

さらなる気象予測の精度向上のために、観測データの利用効率を上げ、よりメッシュの細かい数値シミュレーションを実行し、より多くのアンサンブル計算を行う必要がある。そのどれもがより多くの計算を要する――従来は計算機資源の制約の中で可能な限り行われてきた――だけでなく、シミュレーションの出力データサイズが爆発的に大きくなるため、それらのデータ転送を現実的な時間内に終わらせることも、これまでは限界があったという。

国立環境研究所理化学研究所富士通メトロ東京大学大気海洋研究所の研究グループは、R-CSSに設置されたスパコン「富岳」を用いて、水平3.5kmメッシュかつ1024個のアンサンブル――かつてないほど大規模な全球気象シミュレーションとデータ同化の複合計算を実現した。この計算の規模は、世界の気象機関が日々行っている気象予測のためのアンサンブルデータ同化計算の、およそ500倍であった。

「富岳」の高い総合性能を実証し、最新のスーパーコンピュータとシミュレーションモデル、そしてデータ同化システムが互いに協調しながら開発を進めることによって、今よりも更に大規模な気象予報システムが実現可能であることを示した。これにより、将来の気象予報・気候変動予測の精度向上が期待されるという。「防災・減災に資する新時代の大アンサンブル気象・大気環境予測」(参考資料:文科省PDF)の一環として実施された。

今回、計算科学界で最も栄誉なGordon Bell Prizeのファイナリストに選出された、研究の内容は国際学会SC20で講演された。