当該機を洋上の母船に回収してカメラ映像や音響画像などを確認する手法では、所要データが得られるまで再探査を繰り返す必要があり、母船と水中無人機を有線通信で結べば岩陰等でケーブルの取りまわしが煩雑になり、光や電波による無線通信で結ぶと水中でのそれらの伝搬損失が大きく、一定の距離以上での通信が困難である。これらの課題を解決する方法として今、水中音響通信技術が注目されている。
同技術は光や電波よりも長距離の伝送が可能で、通信ケーブルの取りまわし問題も発生しない――とはいえ、波浪による母船の揺れによって受信する音波に周波数の変化(ドップラー効果)が生じるため、通信障害などを引き起こす課題があり、波浪へのロバスト(強健)性を有する技術・機器の開発が求められていたという。
OKIとOKIシーテックは今年10月、波浪によって揺れ動く母船へ海底・海中から安定した映像を伝送する、水中音響通信技術を用いた実証実験に成功した。業界初だという。今般の成果はやや波のある駿河湾内海域において、OKIシーテックの計測船「ひびき」を用いて得られたものであり、アンカーリング等の仕組みを不要にし、収集データの即時確認を可能にして、海洋鉱物資源の探査・調査作業の効率を飛躍的に高められる。
同実験に先立ちOKIシーテックは、琉球大学、沖縄高専と共同開発したドップラー補正機能(特許第6707737号)により、ロバスト性に優れた水中音響通信技術を開発。今回この技術を用いることで、母船が波浪の影響を受ける場合でも、揺れのない環境と同等の通信速度、品質が実現できることを確認したという。