聴診は患者と向かい合って行われるため、新型コロナのような感染性疾患において実施が容易でない。オンライン診療で電子聴診器を用いる場合でも操作者との近接は避けられない――。患者自身が聴診器を当てられても、非医療者がそれを行う際には、位置の設定などに不便さや困難さを伴う。これからも高齢者人口が増える、日本において患者数が増加した場合、聴診を実施する専門医の負担増にどのように対応するかも懸念事項だという。
NTTは、医療健康ビジョンのもと、多数の音響センサにより生体音を収集し、ネットワークを通じて遠隔伝送する機能を備えた身体装着型の音響センサアレイシステムを開発した。ウェアラブルな同システムは、多チャンネルの音響センサを備えた検査着を軸にしたもので、送信端末と受信端末にて構成される。対象者が検査着を着用すると身体各箇所の生体音が送られる、遠隔操作によってそれらの聴取・全記録・再生ができる。
受信端末の画面に表示された人体図にて、指やマウスで指定した箇所の音(複数センサ信号からの合成推定音)を聴くことができる。各センサがとらえた音響信号波形を指定すればその音を直接聴くこともできる。同システムは、いまの試作機において、18チャンネルの音響信号と1チャンネルの心電波形を同時に収集。聴診で主たる周波数帯域以外も含め、より多くの情報を多次元的に得られるように設計されている。
IOWN構想においてバイオデジタルツインにつながる、「テレ聴診器」の早期実用化をめざしている。同社は今回の研究内容を「NTT R&Dフォーラム2020 Connect」で紹介する。