実用上量子優位性を十分発揮するしくみの出現が待たれている。大規模量子コンピュータは、量子計算が誤りに対して耐性をもつことを最大の特徴とする――が、誤り耐性をもつように量子誤り訂正符号を実装するには、非常に多くの量子ビットが求められる。現在のNISQマシンが100量子ビット以下であるのに対し、100万程度の量子ビットが要ると見積もられていて、これが開発上の大きな壁になっているという。
国立情報学研究所とNTTは、大規模な量子コンピュータ上の計算回路の圧縮化とコンパイラ設計のための新しいアプローチを定式化。この手法を用いることで、量子計算サブルーチン回路を平均約70%圧縮することが可能となる、大規模量子コンピュータの開発に必要とされるリソースの低減化を実現した。
ZXカリキュラス(量子計算回路をグラフィカルに表現する数学的なツール)を3次元トポロジカル符号上の量子計算回路に応用し、同ツールのもつ演算機能を用いて量子計算回路を圧縮した。研究では、ZXカリキュラスと3次元トポロジカル符号間の関係性(コンパイルに用いる)を明らかにすることにも成功。2次元表面符号と3次元トポロジカル符号の統一的な扱いを実現し、ZXカリキュラスの量子コンピュータ言語としての可能性を示した。
大規模量子コンピュータに要する量子ビット数の大幅な削減と、計算時間の短縮化による量子コンピュータの高速化が期待されるという。両者の研究は光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)の支援を受けたものであり、NTTのIOWN構想を量子技術面から加速する。成果はPhys. Rev. Xに掲載された。