温熱生理学の理論に基づき体調不良リスクを推定・アラート発出

気候変動がいわれる近年、日本では熱中症による救急搬送人員数や死亡者数が増加している。暑熱による体調不良が、社会全体で大きな課題になっている。熱中症で救急搬送された人員数は今年6月1日~10月4日、総務省消防庁の調査によると、64,770人にのぼった。

5月にその確定値を厚労省が公表した、19年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」において、死傷者(死亡・休業4日以上)が829人、うち死亡者は25人であった。熱中症予防対策の指針やマニュアルが、同省などにより公開されている(厚労省Webページ)。今月13日、NTTは大学とともに、暑熱環境下で働く作業者の安全安心をめざす取り組みを発表した。

同社は今回、身体負荷推定ロジック(参照ニュース)と、名工大との共同研究により新たに創出した体内温度変動推定ロジックとを用いて体調不良リスクを推定し、さらに横国大および至学館大とも共同して創出したアラート発出基準を用いて、工事作業者自身や作業監督者へ警報する独自手法を開発――。温熱生理学の理論に基づく同手法の有効性を今夏、NTT東日本の協力を得て検証した。

上記両ロジックをアプリとして実装し、ウェアラブル生体・環境センサ(参照ニュース)を着用した人(延べ834人日)の体調不良リスクをクラウド経由で遠隔モニタリングするとともに、アラート発出基準による作業者本人への通知デモシステムを構築。心拍数、衣服内温度・湿度と、実験参加者へのアンケートとを取得し、推定した体内温度変動と温冷感との関連、推定した身体負荷と主観的運動強度(RPE)との関連を確認した。

結果、推定ロジックが工事作業者の主観を可視化できる可能性を示し、熱中症等の体調不良は発生しなかった。実証実験で得られた知見をもとに、今後は体調不良リスクの推定・アラート手法の改善を進めていくという。今回の内容はNTT R&Dフォーラムにて紹介される。