人工知能の進化も支えるGPUを用いて、5G基地局を仮想化

"つくばの研究機関"や"アキバ系ゲーマー"に重宝されていたGPU、画像処理半導体チップは今、世界中のAI研究開発現場やVR/AR(仮想/拡張現実)システムを席巻しつつある。エッジコンピューティングとの相性も良く、第5世代移動通信(5G)時代におけるさらなる発展が期待されている。

GPUは汎用性が高く、複雑な処理を要するアプリケーションの高速動作を可能にする。一方、高速・大容量に耳目が集まりがちな5Gは、低遅延通信も特長の一つであり、より高度な信号処理の計算が求められるため、たとえば通信速度を上げるMIMO(多重入力多重出力)技術が導入されている。MIMO数を増やして通信容量を倍増すると、処理に要するデータ量は2乗倍となる。一層高周波数を用いる5Gでは短い処理時間が求められる。

従来の仮想化無線ネットワーク「vRAN」の設計では5Gの通信性能を十分に発揮できない。ゆえに近年、アクセラレータを活用して処理速度を向上させる研究開発が進められているという。ソフトバンクは、米NVIDIA Corp.と協力し、GPUを活用した5G仮想化基地局の技術――5G vRAN向けソフトウエア「NVIDIA Aerial™」を検証し、優れた性能が得られたと10月29日に発表した。

上り・下りのデータ通信をシミュレーションし、処理速度と消費電力を測定した結果、5Gの通信性能を十分に発揮する上で求められる短い処理時間を満たし、消費電力を抑えることもできた。「NVIDIA Aerial」は、O-RAN Allianceで規定される業界基準に準拠していて、5G基地局の汎用化や仮想化と親和性が高い。ハードウエアの進化に合わせて新たな開発をすることなく、Massive MIMOによる周波数の有効利用などを可能にするという。

ソフトバンクは、高速・大容量かつ低遅延の通信が可能な5Gネットワークの早期拡大をめざしている。