量子暗号×秘密分散技術、量子セキュアクラウドの実用化に向けて

自然災害や大火災、テロ攻撃などに対してレジリエンス(弾性力)を発揮する経営資源、およびビジネスを持続可能にすることが近年いっそう重要になっている。組織において、情報を大量かつ安全に保管し、必要に応じてそれらを完全に復元する仕組みをつくることは必須の課題である。

予測不可能な事象を相手に、将来にわたって高いレジリエンスを保つことは技術的に限界がある。ゆえに情報を分散して安全に保管し、完全に復元できる超長期かつ高いセキュリティのクラウドが求められている。現在普及している暗号技術は、ノイマン型コンピュータを基にした通信の安全を担保しているが、量子力学を応用して"0"と"1"の重ね合わせ状態も演算単位とするコンピュータの登場により、その安全性が脅かされつつある。

量子コンピュータは、いまのスーパーコンピュータをもってしても適時に答えが得られない地球上の様々な課題を解決できるとして、2030年に実用化されることが期待されている。一方で、同年以降、電子決済や各種個人情報の電子申請など高秘匿情報通信に用いられる暗号が解読される恐れがあり、セキュリティの強化が社会課題となっていく。決して破られない暗号技術が求められるという。

凸版印刷NICTQunaSys、カナダISARA社は、高度な情報処理と安全なデータ流通・保管・利活用を可能とする量子セキュアクラウド技術の確立に向け連携する。量子暗号技術と秘密分散技術を融合し、クラウド技術を用いる、量子セキュアクラウドの確立により、改ざん・解読が不可能な高いセキュリティ性を担保し、多様な分野で秘匿性の高いデータの収集・分析・処理・利用を可能とする。

量子セキュアクラウド技術の国際標準化も進めていく構えである。4者は連携して同技術の開発を推進し、22年度中に社会実装に向けたアプリの実証実験を開始。25年に限定的な実用化、30年にはサービス化をめざすという。