呼気医療をめざすシステム、まずは新型コロナウイルス検査から

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行している。今日、日本でも感染収束のめどが立っていない。同ウイルスの迅速かつ高感度・高精度な診断、病期・病状の評価、重症化のリスク判定、予後・合併症の予測と診断などを下す検査法が切実に求められているという。

東北大学大学院医学系研究科および加齢医学研究所は、島津製作所との共同研究により、「新型コロナウイルス対策に向けた呼気オミックス解析システム」開発に取り組んでいる――その成果として今回、従来の⿐や⼝(咽頭)からの試料採取・検査システムに替わる、自然に吐く息を用いた無侵襲呼気オミックス解析法による検査システムを開発した。

オミックスとは、代謝物やタンパク質等の生体分子を網羅的に解析する技術であり、サンプル形態は特に限定されず、鼻腔・咽頭ぬぐい液、唾液、血液、尿、糞便等となる。呼気オミックスでは、吐いた息を採取し、エアロゾル中のウイルスタンパク質・ゲノムと同時に被験者由来の炎症メディエータやエネルギー代謝物を効率良くかつ安全に回収し、ロボット化全自動高速・超高感度オミックス解析を行う。

呼気中に存在するウイルスや生体由来のタンパク質、代謝物を解析する、最先端技術を用いた上記解析法は、試料採取を簡便にするうえ、多面的な解析結果が得られる。様々な感染症対策としても有効で、心血管・肺疾患、生活習慣病、動脈硬化、糖尿病などの代謝性疾患、がんなどの診断や健康管理、未病予防にも応用できる。

将来的に遠隔医療などに展開して、呼気医療という未来型医療の確立を目指す。3者の研究は、本年度文部科学省第1次補正予算による新型コロナ感染対策事業の支援を受けて実施されたものだという。東北大学では、島津製作所と共同開発した基本技術の社会実装に向けて、内閣官房「COVID-19 AI・シミュレーションプロジェクト」予算による応用研究も行っているとのことだ。