コロナ禍におけるESG経営をスコアリング、株価との相関は――

ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の軸とする動きが広がっている。投資家はそれら3つの観点から、企業の将来性や持続性などを分析・評価する。世界では昨今、ESGの取り組みや情報開示状況を評価し、各々を格付けする"ESGスコア"が注目されているという。

ベクトルは、九州大学の馬奈木俊介教授と共同で、コロナ禍の状況におけるESGスコアが株価に与える影響の検証を目的とし、グローバル調査の分析を実施した。今回、独アラベスク社のESG評価プラットフォーム「S-Ray」データを分析し、'20年1月〜5月における企業のESGスコアの運用について調査した。IMFが「世界経済はマイナス成長」とした状況下において、ESGスコア改善に取り組んでいる企業はそれだけでも評価が高い。

それを裏付けるデータとして、九州大学の分析により、企業のESGスコアへの取り組みが株価の上昇に寄与していることが分かった。世界・EU諸国・日本における「ESGスコアが1ポイント上昇した場合の株価の上昇比率」は、世界平均0.153、EU0.637、日本0.401(それぞれESG各項目平均値)であった。世界平均と日本の株価上昇率を比較した場合、後者のそれが前者より「2.62倍」と大きく上回った。

調査結果から、日本企業はESGスコアに対する意識が高まっている。投資家は、コロナ禍においてもESGスコアを意識した経営をしている企業を投資対象として評価の軸にしていることが読み取れる。 が、ESG先進国のEU諸国と日本の株価上昇率を比較した場合、前者のそれがが日本より「1.58倍」上回っている。

ゆえに依然としてEU諸国はESG投資に対する関心が高く、日本は今後もEUの高い基準に到達できるよう努める必要がある――言い換えれば、日本企業はESG経営において大きなポテンシャルを秘めている――独自色を出しつつ是非成果を挙げて欲しいとのことだ。