内部欠陥を3D映像化、製品等の品質保証と競争力強化へ

構造物や工業製品に欠陥が発生すると、大きな事故につながる可能性がある。そのため、非破壊評価技術の確立は重要な課題となっている。様々な分野で、外から見えない内部欠陥を計測する際、超音波(20 kHz以上)が用いられている。

近年、医療分野で開発された超音波フェーズドアレイ(複数素子を有するアレイセンサと制御器により内部を走査)が工業分野に応用されるなどしている――が、内部に発生する複雑な立体形状の欠陥は、最新の超音波フェーズドアレイ装置でも計測できない。同装置は素子数不足により、映像化が2次元に限られていたという。

東北大学大学院工学研究科の研究グループは、米国ロスアラモス国立研究所との共同研究により、内部欠陥を高分解能で3D計測できる超音波映像法を発明。高い信頼性での強度評価や欠陥発生メカニズムの解明に道筋をつけた。圧電探触子送信と超多素子受信レーザ走査2次元マトリクスアレイを融合した「3次元超音波映像法PLUS」を開発し、従来限界を1桁以上うわ回る、数千素子の超多素子2次元マトリクスアレイを実現した。

固体材料内部の欠陥を3次元的に高分解能で映像化することに成功した。PLUSにより、欠陥の3次元情報を材料の強度評価に取り入れることができるようになり、経済的かつ安全な構造物の運用が可能となる。本計測により、高いレベルでの品質保証が可能となり、工業製品に高信頼の付加価値を付けることで、国際競争力強化にも貢献できる。

3次元情報の取得は欠陥発生・成長機構の解明にもつながり、学術分野の発展にも役立つ。PLUSは送信探触子を低周波のものに変えるだけで、橋梁・高速道路・トンネルなどのコンクリートインフラの検査にも利用可能であり、安全・安心な社会の実現に寄与するだろうという。研究グループの成果は、米国物理学協会の学術誌「Applied Physics Letters」に掲載された。