疑似天窓と床面演出で病院待合室などの気分を解放

大規模建築物の中心部、あるいは地下では、外界と繋がる開口部つまり窓を設けることが難しい。そのような無窓空間は、閉塞感や親しみにくい印象を人に与えるだけでなく、作業効率の悪さや、疲労回復のしづらいさを生むため、従来より改善が望まれていたという。

パナソニック ライフソリューションズ社は、福井大学と共同で、「天窓照明」とスポットライト型プロジェクター「スペースプレーヤー」などを導入した福井大学医学部附属病院の外来受付Bの待合室にて、昨年10月から今年1月まで通院者や来院者延べ379名の協力の下、実証実験を実施。閉鎖空間での疑似天窓とプロジェクターによる空間演出によって、空間の印象や来院者の気分を改善する環境が作られることを確認した。

同病院、明石行生研究室および高エネルギー医学研究センターとともに、天窓照明2台で天井、スペースプレーヤー1台で床面、スピーカー付ダウンライト1台でシーンに応じた音を再現――「青空」「青空と木洩れ日」「水面」「サメが泳ぐシーン」を基本形に、木漏れ日に小鳥のさえずりを組み合わせたり、水面に波の音を組み合わせたり、サメが泳ぐのを下から眺める様子と波の音を組み合わせるなどして、自然や癒しを感じられる空間を演出した。

①"サメと波の音"のシーンでは「気分を紛らわせられる」、②"水面と波の音"および③"青空木洩れ日と小鳥のさえずり"のシーンでは「自然を感じる」「屋外とつながっている」と印象アップ。②と③のシーンにおいて、「活気-活力」「友好」などの気分が改善されることを確認した。アンケートにて、多くの人からそれらが好印象であるとの回答を得た。

病院の閉鎖的な空間で疑似天窓装置などを利用することにより、空間の印象と来院者の気分を改善しうる環境を提供できる可能性があることがわかったという。実証実験の内容は9月15日、'20年度(第53回)照明学会全国大会にて発表された。