免震建物の変位を低コストでデジタル計測、安全かつ迅速な確認作業へ

地震発生時、構造物に生じた大きな横揺れを、鏡面仕上げの部材(罫書き板)に針で線状に描いて記録する。「ケガキ計」は、免震建物の多くで使用されていて、揺れの収まった後には免震層内に技術者が入り、その針の軌跡を目視確認して、必要に応じて板を交換するものである。

建物の安全確認や余震の可能性から、技術者は地震直後にそこへ立ち入ることが難しく、上記作業を数日待たねばならないこともある。建物の変位をデータとして計測可能な「水平型変位計」というものもあり、これは遠隔計測ができ、免震部材の維持管理で重要な加速度(gal)や過去の履歴なども詳細にわかるけれど、水平2方向に動く免震建物の変位を計測するには最低2台の導入を要する。

水平型変位計については、設置する際にはガイド材などの付属装置も必要であり、十分な設置スペースを確保しなければならないといった課題があり、適用件数が多くないという。竹中工務店は、地震時における免震建物の動きを計測する「直立型変位計(特許出願済)」を開発し、深江竹友寮、および横浜市役所新庁舎に適用した。新しい変位計の販売は、東京測振が行っている。

建物の免震層に設置することで、ロッド(計測棒)が免震層の動きに合わせて傾きながら動く。この傾きを測り、1台のみで免震建物の水平2方向の大きな変位を計測可能とした。直立型のため、設置に必要なスペースを最小限に抑えられる。表示システムを設けることで、建物内居室の管理用PCから計測データの確認や免震部材の健全性判断が可能になり、地震が発生するたびに免震層へ入って確認作業を行う必要がなくなる。

直立型変位計は、従来の水平型変位計との比較で設置コストを50%程度に削減できるという。竹中工務店は、免震建物の実績が業界トップクラスであり、新築建物はもとより、建物を使いながら免震化することも可能にしている。免震技術および免震補強ソリューションとともに。