がんクリニカルシークエンスを対象に、将来のゲノム医療において秘匿とすべきデータの種類と、データの暗号化に量子暗号通信技術を用いる方法を検討してきたという。東芝、東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)および東北大学病院の3者は、ゲノム医療の一つであるクリニカルシークエンス向けに量子暗号通信技術を適用したシステムを構築したことを今月7日に発表。
同システムを用い、がん患者のゲノム解析情報(エクソームシークエンス:ゲノムの中でタンパク質をコードするエクソン領域のみを限定して解析することにより、効率的にエクソン上の変異を検出する手法)と、医師等の専門家がゲノム解析データを参照しながら議論するオンライン会議の情報(音声・映像)――2種類のデータを量子暗号通信技術によって安全にリアルタイム伝送できることを実証した。
クリニカルシークエンスは、遺伝子の配列を超高速に読み出す次世代シークエンサー(NGS)を用いて解析した患者のゲノムデータを検証し、その結果を医師等の専門家が、疾患の診断や治療方針の選択の補助として利用するゲノム医療分野の新たな検査方法。このたびの成果は、量子暗号通信技術のゲノム医療への適用ならびに安全・安心なゲノム医療の確立に貢献する。
ゲノム医療分野における量子暗号通信技術を用いたシステムの構築・実証も世界で初めてだという。今回の研究の一部は、内閣府SIPにおける「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」によって実施されたものであり、3者は、上記成果の技術と実証内容の詳細を、今月10日~14日にオンライン開催される国際会議「QCrypt 2020」で発表する。