リモートセンシング(人工衛星からの観測情報を利用)による広域被害把握は極めて社会的要請が高く、緊急観測による詳細かつ迅速な被害地図の作成が国際的にも課題となっている。近年、様々な分野で急発展しているAI(機械学習)による画像解析手法を災害時に活用し、被害を迅速かつ正確に把握することへの期待が高まっている。そこで用いる衛星観測データの特徴は、観測条件に大きく依存する。
同時に地域固有の特性を示すことが多く、過去の観測データと被害の情報を学習して、未然災害の被害把握にどう活かすかが重要な課題の一つだという。東北大学災害科学国際研究所のErick Mas准教授と越村俊一教授、ペルー国立工科大学・日本ペルー地震防災センターのLuis Moya研究員(同研究所客員研究員)の研究グループは、過去の水害を機械学習した浸水域推定アルゴリズムを別の水害に適用し、その性能を評価・実証することに成功した。
過去のデータと、新たに発生した水害被災地の衛星観測データから高精度で浸水範囲を推定するアルゴリズムを構築――。'18年西日本豪雨水害のデータを学習し、'19年台風19号水害の浸水域を推定したところ、約8割の精度で浸水範囲を特定し把握することができた。過去の水害データを蓄積して、それを学習することにより、将来起こる水害の被害を迅速かつ高度に把握・推定できることを実証した。
災害の過去情報を学んだAIは、これから起きる災害の把握をほぼリアルタイムに行える可能性があることを証明できたという。同グループの研究成果は今月13日、MDPIの「Remote Sensing」誌に掲載された。