人工知能と実験免疫学を融合、個別化がん免疫療法の臨床応用へ

がん免疫療法の中で、免疫抑制解除型の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)開発は一定の成功を収めたものの、その治療効果は一部の症例に限られている。従来、遺伝子変異由来のがん抗原に対する免疫応答がICIの効果の鍵を握ることを示唆するデータが報告されてきた。

したがって、免疫抑制の解除に加え、がん抗原(ネオアンチゲン)に対する免疫応答を増強するがん免疫療法を開発できれば、治療効果を引き上げられる可能性がある。有効ながん免疫療法を実施していくうえで重要なことは、①強い免疫応答を引き起こしうる有望なネオアンチゲンの選定と、②ICI、がんワクチン及びその併用治療を含むがん免疫療法の適応症例の適切な選択にあるという。

愛知県がんセンターNECは、人工知能(AI)と実験免疫学の融合により、精度の高いがん抗原同定システムの構築と治療選択バイオマーカーの開発を行い、革新的個別化がん免疫療法の臨床応用に繋げることを目的とした基礎的共同研究を今月6日に開始する。

同社が取り組んできたAIによる患者一人ひとりの遺伝子変異由来のネオアンチゲン予測技術と、同センターの持つT細胞を用いたネオアンチゲンのスクリーニング技術により、ワクチンに使用可能なネオアンチゲンを同定する。また、腫瘍の免疫微小環境の解析データや臨床情報をもとに、AIを活用した治療選択バイオマーカーを開発する。

愛知県がんセンター腫瘍免疫制御トランスレーショナルリサーチ分野は、実験免疫学を専門とし、呼吸器外科、呼吸器内科と共同。手術で得られた切除腫瘍等から、患者一人ひとりのがんの免疫微小環境や腫瘍抗原特異的免疫応答の解析を行っている。一方、独自開発したAIによるネオアンチゲン予測システムが世界で高い評価を得ているNECは、日本企業として初めて、PICICRIが協同運営する国際コンソーシアム「TESLA」に参画している。