5mm以下のプラスチック粒子が世界中の海を汚染している。それは北極や南極でも観測されたとの報告があり、観光・漁業に影響を及ぼすプラスチックごみが意識されている以上に深刻な問題である。生態系への影響、そして食物連鎖を通じた人体への悪影響が懸念されている。
『海洋プラスチック問題について』（環境省PDF）でも触れられている、マイクロプラスチック汚染の実態を正確に把握するには、各海域におけるプラスチック粒子の数・サイズ・種類を分析することで、流出源を推定し、流出経路・到達地を予測する必要がある。そのため、海水または前処理した堆積物等を目の細かい網ですくい、その中から対象物を顕微鏡などを用いて一粒ずつ手作業で拾い出して分析していた。
従来の調査手法は膨大な時間と手間がかかるうえに、網の目をすり抜ける300μm以下の粒⼦を過小評価してしまう課題があった。計測手法の高度化が求められていたという。NECは、JAMSTECとともに、AI画像認識技術を活用して高速かつ自動的に海水や堆積物からマイクロプラスチックを計測するシステムを開発。同機構の研究開発を支援した。
最先端AI技術群「NEC the WISE」のひとつ「RAPID機械学習」による画像認識技術にてマイクロプラスチックを高速かつ高精度に検出・分類するしくみに加え、蛍光顕微鏡で撮影したマイクロプラスチックが試料中を流れる動画から、AI連携のための画像を抽出してデータ化するソフトウェアも提供された。JAMSTECは、毎分60個の処理速度で、サイズや形状を自動的に分類し集計することが可能になったという。
「地球シミュレータ」を利用した「沿岸災害シミュレーションシステム」の研究開発などにも取り組んできた。NECは今回、上記計測手法が確立されて普及し、マイクロプラスチック汚染の実態解明が進み、適切な排出規制の立案に貢献できることに期待を寄せている。