ディープな強化学習によって海上輸送計画を最適化

いわゆるAIの基盤――機械学習は「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」に大別される。囲碁将棋でトップ棋士に勝利したのち産業界を沸かしているディープラーニングAIは、厳密には、強化学習の関数にディープ・ニューラルネットワークを用いたもので、「深層強化学習」のしくみだ。

コンピュータシステムが受け取る情報(データ)から、最適な行動を出力してフィードバックすることを多層回路で繰り返しながら、全体最適な解(価値)を算出する。深層強化学習は、学習させる組み合わせの数が膨大になる社会課題への活用が困難だと言われてきた。たとえば日本国内をゆく船による海上輸送ルートの組み合わせ数は、囲碁の10の360乗通りよりも遥かに多い、10の800乗通り存在しているという。

出光興産グリッドは、三井物産と深層強化学習などのAI技術を活用した「内航船による海上輸送(配船)計画の最適化」検証を完了。実績データとの比較で、安定供給しつつ輸送効率を最大約20%改善できることを実証した。配船計画作成の成功により、輸送コストを削減、属人化しがちであった配船計画業務の標準化ができ、燃料消費量の低減による環境負荷軽減にも貢献できるという。

さらに、所要時間を約1/60にまで削減し、約1ヵ月の計画を数分間で立案可能としたことにより、担当者の業務負担を大幅に軽減し、複数の配船計画から最良のものを選択するという業務プロセスの改善も期待できる。今回構築した配船計画モデルは、船舶の運航効率や製品の積み付けバランス、航海時間や荷役時間を含めた船舶稼働時間など様々な制約条件を考慮してある。

配船計画担当者や海運会社にとって現実的な配船計画を作成できることを確認しているという。3社は今後、製油所・油槽所・船舶の数を一層増やしたAI配船計画モデル構築の検証を進めながらシステムの仕様検討を行う。'21年のシステム運用開始をめざしている。