事故防止や運転負荷の軽減を目的としたADAS（先進運転支援システム）が台頭し、自動運転技術および車両の開発が進んでいる。
車の安全走行には、自車両の動きを確実に推定し、他車両の動きを正確に予測する技術が不可欠である。ADASではLiDAR（レーザー光検出＆測距）やGPS等のセンサが用いられているが、高価だったり、衛星からの電波が届かなかったり――。先の動きの高精度予測では、周辺の道路形状に合わせて各予測AIモデルを準備して駆使する必要があり、様々な車の振舞がある一般道への対応は、難しいのが現状だという。
東芝は、自動車やドローン等の安全性向上や自動走行・自律移動の実現に向けて、自らの動きを高精度に推定する「自車両の動き推定AI」と、様々な交通シーンで他の動きを予測する「他車両の動き予測AI」を開発した。2つのAIはそれぞれ、公開データを用いた実験において、推定結果と実距離の差の絶対値の平均＝推定誤差を従来技術との比較で40％削減した。両AI技術ともに世界最高精度（同社調べ）を達成したという。
「自車両の動き推定AI」は、車載カメラ画像から周囲環境の3次元空間地図の生成と車両位置の推定を同時に行う技術（SLAM）をベースに、慣性センサを用いることで様々な風景に対応できる。高速道路上で速度が一定の車や、加減速の多いドローンにおいても、動きに応じて画像、加速度センサ、角速度センサごとのデータの有用性を各時刻で判定し、変化がある有効なセンサだけを適宜組み合わせて動きを推定する。
一方、「他車両の動き予測AI」は、道路形状などを一般化した幾何学的な特徴をディープラーニングで学習する。実際の道路の形状に依存しないAIが実現でき、一般道等においても膨大な数の予測AIモデルの作成が不要となるという。同社技術の詳細は、オンライン開催中の国際会議「ICRA2020」にて6月1日（UTC）に発表された。