金属組織の粒度等級をAIで自動判定する

鉄鋼メーカーや加工部品サプライヤーの品質管理現場では、徹底した金属組織試験が行われる。鋼材の一部を切り出した試験片に対して、検査員が顕微鏡を用いて非金属介在物の種類や量、鋼の結晶粒度(粒子の平均直径)等を目視検査する。

それらは官能検査であるため、個人の感覚が大きく影響し、判定結果のばらつきが発生する可能性がある。検査業務が長時間に及べば検査員への負担が大きくなり、判定の誤りや品質データの入力・転記ミスが生じる恐れがある。経験豊かな人材の確保や技術伝承が難しいこともあり、金属組織試験の自動化が求められている――が、熟練検査員の目視検査に匹敵するレベルでの自動化は困難であったという。

東芝デジタルソリューションズは2日、鉄鋼業や自動車・航空機部品の製造業向けに、金属組織試験自動化ソリューション「AI等級判定サービスMETALSPECTOR®/AI」の提供を始めた。画像処理技術とディープラーニングの活用で、官能検査に頼っていた金属組織試験を自動化し、厳格化する品質管理や熟練検査員の不足への対応に貢献する。ニュース出典:金属組織試験自動化ソリューション「AI等級判定サービスMETALSPECTOR®/AI」を提供開始

導入メリットとして「ログ管理による検査作業記録の信頼性向上」「自動測定による省力化」「判定精度の統一化」「熟練検査員の技術伝承」が挙げられる。同ソリューションでは、東芝アナリティクスAI「SATLYS™」を活用し、熟練者の知見を盛り込んだ多様な教師データに基づいて学習したAIが、クラウド上で鋼材品質の結晶粒度の等級判定を行う。熟練検査員の目視検査に近い認識精度が実現される。

非金属介在物測定装置との併用により、ミクロ組織試験業務の多くを自動化し、監査にて証跡を示すことも可能になる。今回のソリューションは東芝グループのインダストリアルIoTサービス「TOSHIBA SPINEX」の一つだという。同社は今後も、鉄鋼製品の信頼性及び競争力アップをめざす顧客の事業を支援していく考えだ。