大動脈瘤のCT画像AI診断補助システムを開発、診断プロセス確立へ

医療画像の診断を専門に行う放射線科医はいま、世界中で不足している。その傾向は地方医療の現場においてより顕著である。およそ10年前に超高齢社会となった日本では、それが破綻すれば大出血しかねない大動脈瘤が、社会問題になると予想されている。

大動脈瘤の診断に用いられるCT画像は撮像範囲が広い。高齢者が対象となれば併存疾患も多く、画像診断の負荷は非常に高いものとなる。超高齢社会において放射線科医は、大量のCT画像から効率的に大動脈瘤を診断することが求められる。地域の中核病院では、医療画像診断を要する患者に多く対応していて、放射線科医の負担軽減、およびAI(人工知能)等のデジタル技術による診断支援を望む声が強まっているという。

NTTデータは、岩手医科大学と共同し、大動脈瘤の画像診断補助および臨床意思決定支援システムについて、放射線医学講座にて6月19日に実証実験を開始する。岩手医科大学附属病院の患者27,000人(大動脈瘤4,500例+循環器疾患以外22,500例)の医療画像データを利用して、NTTデータのAI画像診断エンジンの学習を行い、医療画像から大動脈瘤の自動測定および上記システムの診断性能評価を行う。

目的は、「放射線科医の診断を効率化できる大動脈瘤のCT画像AI診断補助システムの開発」と、「放射線科医がAIを活用して行う診断プロセスの確立を進め、医療へのAI導入における先進的・中心的役割となること」である。

'23年1月末まで行う実証実験の結果を踏まえ、実際の診断業務での医師の負担削減効果の検証と、大動脈瘤以外への拡大も進め、放射線科におけるAI活用を広めることを共に目指す。NTTデータと岩手医大は、AIによって医師の診断時間を包括的に削減することで、地域医療や医師不足解消の一助になることを期待する。画像診断などの医療分野において、AI導入を通したデジタル化を推進していく考えだ。