Opensignal、日本のモバイルネットワークの検証・調査結果に関する記者会見開催

世界中で1億台以上のデバイスから毎日収集された数十億の測定値を使用して、ワイヤレス業界で最大の規模と頻度で全世界のモバイルネットワークエクスペリエンスを分析するOpensignal(本社:ロンドン)は4月16日に「日本におけるモバイルネットワークエクスペリエンスの現状についての調査報告書」を公開した。

同日、都内およびオンライン上で記者会見が開催され、出席した同社分析担当バイスプレジデントIan Fogg氏は日本の通信事業者が提供するモバイルネットワークエクスペリエンスを同社独自の指標で評価・分析した結果について説明を行った。

Opensignalのメトリックスに関する説明

アップロード・スピードはドコモとソフトバンクが優勢、auは4Gアベイラビリティ賞

Opensignalが提供するモバイル分析ソリューションの特長のひとつに、あくまでもニュートラルな立場で提供する独立系のモバイル分析会社であることが挙げられる。さらに、実際のユーザー・エクスペリエンスの測定に基づいて、世界のモバイル・ネットワークの実情について理解する為のグローバル・スタンダードを提供していることも特長のひとつに加えられる。世界中で1億台以上のデバイスから毎日収集された数十億の測定値を使用し、創業以来、一貫した手法による解析、分析結果を届けている。この信頼性のあるレポート結果はオープンに公開され、携帯電話会社や通信規制当局、機器メーカー、メディア、広告、アナリストなど幅広い業界で活用されている。4月16日に公開された「日本におけるモバイルネットワークエクスペリエンスの現状についての調査報告書」についても、その分析方法と活用の利点について、Ian Fogg氏が説明した。

「Opensignal社は、現実の世界で常にいったいどのようなモバイルエクスペリエンスが起きているのかについて分析するため、実際のスマホからデータを収集している。スマホ上のゲームやビデオ、ウェブといったアプリやサービスの消費量から、オペレーターネットワークに至るまでを測定し、データサイエンスによる分析をかけている。ユーザーの方々が実際にモバイル・ネットワーク上で体感している経験を理解するための決定的な指標となるだろう。さらにこの生のデータから分析することによって、事業者の競合上の優位性なども見極めることができる。どの国においてもどの事業者においても同じ手法で分析しているため、比較分析も行うことができる。」

なお、このたび公表された日本の調査データは2019年12月1日から2020年2月28日までの3か月間にわたって、合計33万3336デバイスからデータが収集され、測定合計は22億607万9950に上った。日本の通信事業者のモバイル・ネットワーク・エクスペリエンスに関する調査では主に8つのカテゴリー「スピード及び遅延」「4G利用率」「4Gカバレッジ」「ダウンロード速度」「アップロード速度」「モバイル・ゲーム体感」「ビデオ体感」「ボイス・アプリ」で調査・分析された。ボイス・アプリについては日本での普及率の高いLINEなどを利用したコミュニケーション体感を示す。

モバイル・ネットワーク・ユーザー体感受賞,Japan

調査結果では、「ビデオ体感」においてソフトバンクが80.3ポイントでトップ、「ダウンロード・スピード」においてはドコモが52.7Mbpsでトップ、「アップロード・スピード」はドコモが10.3Mpbsでトップ、「4Gアベイラビリティ」はauが99.0%でトップ、「4Gカバレッジ」はドコモが9.7ポイントでトップ、「遅延」はソフトバンクが最小値の36.2msでトップ、「音声アプリ」はauが84.0でトップだった。日本の通信事業者のモバイル・ネットワーク・エクスペリエンスの全体の特徴は「世界トップクラスのネットワーク環境を提供するすべての通信事業者がエクセレントの評価を獲得」「画像やビデオのアップロード・スピードではドコモとソフトバンクが優勢」「auは4G接続の高い可用性を実現し、4Gアベイラビリティ賞を受賞」「ドコモはダウンロード・スピードが突出」「地域別分析では全国集計とは異なる特色が大阪、名古屋、京都でみられた」とまとめた。

また世界のモバイル・イノベーション分野で日本は長きにわたって、高い評価を得るとともにモバイル・ネットワークの品質において、優れたユーザー・エクスペリエンスを誇っていることも強調された。また5G時代のモバイル・ゲーム・エクスペリエンスに関する調査では日本は100か国中3位にランクインしていることもわかった。なお今後の5Gの展開についても触れ、「既に5Gをローンチしている地域から計測を始めている。国ごとの5Gエクスペリエンスの比較もできる。5Gのエクスペリエンスにおいて重要な鍵は、いかに優れた4Gネットワークを持っているかということにある。理由は5G単体では運用できないからだ。」とIan Fogg氏が説明した。

新型コロナでWiFi接続時間長期化、モバイルのスピードダウン

続いて、世界中が危機に瀕している新型コロナウィルスのモバイルユーザーへの影響について、その調査結果発表を明かした。スマホがWiFiに接続されている時間を測定した結果においては、平常時は在宅時間が長くなる週末は接続時間が長く、平日は短い傾向があるが、2020年の1月・2月は香港、シンガポール、韓国でWiFi接続時間が比較的長い傾向にあったという。また各国でロックダウンが始まった3月半ばころからは、多くの国でWiFi接続時間が長くなる傾向をみせた。その頃、日本はまだそのような変化は見受けられなかったこともわかった。またイタリアは、比較的早期の段階から変化を見せていたことも調査結果から明らかにになった。

WiFi接続時間だけでなく、モバイルの接続傾向についても各国で調査が行われ、Ian Fogg氏はその結果について「危機的な状況においてもモバイル・ネットワークの重要性が示された。」と強調した。当初の予想では在宅時間が長くなることでモバイルの利用頻度が落ち、モバイルのスピードは上がるという結果が見込まれたが、実際は4Gのスピードが落ちる現象が起きたという。これには理由があり、ひとつは多くの国で電気通信事業者が無償でモバイルデータの使用を提供され、それによってアクセス数が増え、スピードが落ちたことが挙げられた。これに加えて、自宅から日中、夜間を問わずいろいろな時間にビデオやゲームが使用されたことが予想される。ただし、全ての国において同じような変化が起きたわけではなく、日本、香港、台湾、韓国では4Gスピードに変化はなかったという。これら新型コロナウイルスによる変化を測定した調査結果についてIan Fogg氏はこのようにまとめた。

「状況は刻々と変わっているなか、ウィークリーベースの測定で様々なことを予測することは難しいが、日中、夜間を通じていろいろな場所からモバイル・ネットワークへのアクセスが増えていることは確か。なかでもビデオ利用が重要になっている。またWiFi接続時間の長期化やモバイルのスピードダウンなど主な特徴もみられた。国によっては利用価格の無償提供が行われ、政府が一時的にモバイルのキャパシティを増やすケースもある。Opensignal社ではこのような変化について、日々トラッキングしている。こうした調査においても独立性を担保しながら分析し、エクスペリエンスを重視している。ウェブサイトで公開し、日本語提供も可能である。」

最後にOpensignal社のデータ提供の価値について「世界的に危機的な状況がユーザーの行動にどのように影響を及ぼしていくかについて引き続き注視していく。そして独自の視点からデータを提供していきたい。さらにデータサイエンス分析から最終的にアクションに繋げていけるような意味も見出していく。」と力強く語り、会を締めくくった。