コンピューターによる情報科学をインフォマティクスという。データ駆動型社会の実現をめざす近年、AI(人工知能)を自然科学に適用し、触媒開発を加速させる動きが活発化している。
そのような試みは触媒インフォマティクスと呼ばれ、新規の研究分野として学術・産業界から注目されている。触媒インフォマティクスは多彩な技術の融合によるため専門性が高く、高度なプログラミング技術を要し、実用化が進んでいない。各触媒研究者の所有するデータを蓄積・共有するしくみが存在しないことも、インフォマティクスを推進するうえで大きな障害だったという。
北海道大学とJSTは21日、北大理学研究院の研究グループが、触媒データをオープンに共有でき、プログラミングを必要としない、機械学習・データ可視化を可能とした触媒インフォマティクス・プラットフォーム「Catalyst Acquisition by Data Science(CADS)」の開発に成功したことを発表した。同プラットフォームでは、ウェブブラウザ上での簡単なマウス操作で触媒インフォマティクスを用いて触媒設計できる。
研究者が持つデータの可視化や機械学習による触媒設計に加え、触媒データの公開により世界の触媒研究者との情報共有も可能とし、触媒データセンターとしての役割も果たす。CADSで、上記研究グループは実際にOCM(メタン酸化カップリング)触媒データを分析し、CADSのインタラクティブ可視化等によって、OCMの反応収率に影響する要因の切り口を見出した。
その普及により、データ駆動型の効率的かつ直接的な触媒設計が加速すると期待される。CADSの研究は、AMED-CRESTにおける研究開発課題「脂質による体表面バリア形成の分子機構の解明」の一環で行われたものであり、今回の成果は「Reaction Chemistry & Engineering」誌にオンライン公開された。