材料の開発期間を大幅に短縮、経験値ベースの製品を超える製品へ

無数のパターンで実験を繰り返し、膨大な年月をかけて、各種製品の材料が開発される。世界において、日本の機能性材料は高いシェアを誇り、産業競争力の源泉となっているものの、コンピュータサイエンスを駆使した開発が進む近年、油断はできない。

日本も研究開発を加速する必要がある。材料分野において、シミュレーションやインフォマティクス(情報科学)を用いた研究開発が国内外で盛んであり、特にマテリアルズインフォマティクス――'11年米国、'15年欧州と日本、'16年中国が取り組みを本格化――は、新しい開発手法として注目されているという。

NEDO超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超PJ)の委託事業として、タッチパネル用透明伝導性・フレキシブル回路用・フレキシブルディスプレイ用基材など幅広い分野への利用が考えられる「フレキシブル透明フィルム」の設計に、人工知能(AI)を活用し、ポリマーの探索に取り組んでいる。昭和電工産総研ADMATは、要求特性を満たすフィルムの開発の実験回数を25分の1以下に低減できることを実証した。

はじめに熟練研究員が27種類のフィルムを作成し、その原料の分子構造、モル比などの化学的な情報をECFP法を応用して説明変数に落とし込み、目的変数に換算透過率、破断応力、伸びの3項目を選択し、作成したフィルムの実測データをAIに学習させた。そして、その3項目が等しい割合で最大となる配合をAIに予測させ3種類のフィルムを作成。それらと、同研究員が自己の知見に基づき作成した25種類のフィルムとを比較した。

結果、上記3種類のフィルムの物性値は、いずれも上記25種類のフィルムの値よりも優れていることが判明した。大幅な開発期間の短縮だけでなく、研究員の経験知をもとに作成した製品を超える製品が開発できる可能性があることも実証したという。詳細は、超超PJ成果報告会にて発表される。