まれではあるが、外科手術後にガーゼが残っていたために患者の容体が急変したなどという報道を見聞きする。術後のガーゼ遺残は重大な事故であり、合併症や感染等のリスクがある。そのため医療機関では、ガーゼの見落としを防ぐ仕組みづくりが進められている。
手術前後に数えるガーゼ数の一致をみることが一般的であり、さらに、術後には手術室内で移動型X線撮影装置で撮った画像を目視確認し、ガーゼ遺残の有無を明らかにする。手術用ガーゼには造影糸が織り込まれていて、X線画像ではそれを視認するが、そこに映った糸は白くて細いため、骨と重なってしまう場合などには確認しづらく、遺残が発生することがある。医療機関では、その対策をサポートする技術へのニーズが高まっているという。
富士フイルムは、超軽量移動型デジタルX線撮影装置「FUJIFILM DR CALNEO AQRO」の新オプションとして、人工知能(AI)技術を用いてつくった「手術用ガーゼの認識機能」を、富士フイルムメディカルを通じて5月1日に発売する。長崎大学病院の協力を得て開発した同機能は、同社の画像認識技術と、ディープラーニングAIを用いて設計されていて、ガーゼの可能性がある陰影をX線画像中から認識し、その位置をマーキングする。
AIの性能を高めるためには大量の良質な学習データを要するけれど、ガーゼが体内に残存しているX線画像は世の中に少量しか存在しない。そこで富士フイルムは、長年培ってきたX線画像処理技術にAI技術を組み合わせることによって、少ない学習データでもガーゼの認識性能が高まるようにした。「手術用ガーゼの認識機能」を提供することにより、外科医の術後X線画像確認をサポートし、ガーゼ遺残の発生の低減を目指す。
今回、ベッドサイドや術場で使用でき大好評の移動型X線撮影装置「カルネオアクロ」に同機能を搭載することで、医療従事者の作業負荷軽減に寄与する。