室温で動作する光量子コンピュータ開発に道筋、新たな量子光源による

量子力学における"重ね合わせ"を応用する。量子コンピュータは、従来型の電子計算機が苦手とする問題を高速に解けることから、先進諸国で開発が進められている。なかでも、大規模な汎用量子計算の実現に向けて、光量子コンピュータが待望されている。

飛行する光を量子ビットとし、一方向量子計算という手法を利用する。あらかじめあらゆる量子計算の重ね合わせとなる汎用的な量子もつれ状態(2次元クラスター状態)を用意しておき、量子ビットを順次測定していくことで残りの量子ビットを操作、任意の計算を実行する。この方式では近年、非線形光学結晶に励起光を照射することで生成される、量子ノイズが圧縮された(スクィーズド)光を用いた研究が進んでいる。

当該光を用いることで量子もつれを作れる。室温動作可能な汎用光量子コンピュータチップには、広い帯域と高い圧縮率を持った連続的なスクィーズド光が必要不可欠とされる。が従来手法の多くは、鏡を用いて結晶中に光を往復させてノイズ圧縮率の高いそれを生成していて、その帯域は構造上の理由からギガヘルツオーダーに制限されていた。

結晶中に光の通り道を作り、励起光が1回通過する間にスクィーズド光を生成する手法で、テラヘルツオーダーの帯域すなわち上記制限を解いて広帯域にできるものの、連続的な光における量子ノイズ圧縮率は37%程度にとどまっていたという。NTTは、東京大学と共同で、将来の汎用光量子コンピュータチップに必須となる高性能なスクィーズド光源を実現した。

非線形光学デバイスにより、広帯域性と高いノイズ圧縮性を両立した。飛行する光量子ビットの長さを300μm以下に短縮でき、光チップ内での操作と同時に光コンピュータ自身のクロック周波数を上げることも可能になるので、高速な量子計算が期待される。一部JSTCRESTの支援を受けて行われた研究の成果は、米国物理学協会のハイライトに選ばれた。