ホモロジー解析×機械学習、CT画像で放射線治療効果を高精度推定

放射線治療では、異なる患者に同じ放射線治療を施した場合でも、治療効果を正確に予測することが困難である。治療効果が高い場合と低い場合がでてくる。放射線治療を行う前にその効果を把握できれば、患者ごとに最適な治療法を提案できる可能性があるという。

東北大学の医学系研究科放射線腫瘍学教授らのグループは、大阪大学と共同で、データの本質的な形をとらえられるホモロジー(位相合同)解析技術とAI(人工知能)のひとつ機械学習を用いることで、CT画像のみから腫瘍の特性をより詳細に抽出でき、放射線治療の効果を予測できる手法を開発。これにより、治療前CT画像から放射線治療の効果を高い精度で予測することに成功した。

位相幾何的特性による図形分類即ちホモロジー解析では、穴が一つの「コップ」と「輪っか」は同じ物体だと考えられる。ゆえに、白黒の濃淡として得られる腫瘍CT画像を濃さによって白または黒に変換(2値化処理)。その際、白と黒に分けるしきい値を連続的に変化させて、様々なしきい値での画像パターンを取得。腫瘍の特徴量を反映したグラフ(ホモロジーヒストグラム)を作成後、同グラフから抽出した特徴量を機械学習することで予後を予測する推定式(リスクスコア)を算出した。

この新しい診断手法について、米国TCIAの公開データベースのうち287人分の画像を機械学習の教師データに用い、86症例の放射線治療を行った肺癌患者に対して治療経過の予測ができるかを評価した。結果、高い精度(C-index=0.689)でそれが可能であることを明らかにした。今回のホモロジー解析による治療経過予測は、これまでで最高の予測精度を達成したという。

治療前にその効果を正確に予測する診断法の確立、および個別最適な治療方針の決定支援システムの開発につながることが期待される。研究成果は国際科学誌「Medical Physics」電子版に掲載された。