経済と社会がグローバル化している。近年、世界的に航空需要が高まり、乗り継ぎを含めたネットワーク拡大などが進んでいて、航空会社においては、緻密な運航ダイヤの立案と、計画に即したオペレーションが要求されているという。
ANAでは、悪天候(大雨、濃霧、強風、台風、降雪など)や機材メンテナンス、空港・空路の混雑などでダイヤの乱れが発生した際、ダイヤ調整を担うベテランがその経験とノウハウに基づき、客の予約数や乗り継ぎ便、機材の使用状況、運航に関わるオペレーションの実施状況、空港の運用時間や駐機場など複雑な条件を考慮して、運航ダイヤを人力修正している。
修正ダイヤを短時間で立案するには高度なスキルが必要である。ベテランといえども人が考慮できる条件は限られているうえに、熟練者の養成には長期間を要する。それらを背景に、人力業務のデジタル転換即ちイノベーションが求められていたという。ANAと日立製作所は、日立コンサルティングとともに、先進のデジタル技術を活用して、日常的に発生する航空機の運航ダイヤ修正を高速・最適に自動立案する技術の実証実験を行っている。
同技術は、日立独自の最適化モデルを複数組み合わせた高度なデジタルテクノロジにより、短時間かつ高精度に複数の運航ダイヤ修正を自動立案するものだという。両社は昨年から実施中の当実験を通じて、1日当たり国内線約800と国際線約200の運航便に対し、熟練者が人手で行っていた運航ダイヤ修正業務をシステムに置き換えることの実現性と、技術の有効性を検証している。
今年3月5日時点で、熟練者と同等の速度・精度での運航ダイヤ修正と、人手では困難な複数の同時立案を実現できる見込みだという。デジタルトランスフォーメーションに注力するANAおよび日立は今後、より多面的で複雑な実例への適応性を確認するため、運航ダイヤ修正時間のさらなる短縮と精度向上をめざしていく構えだ。